後立山(長野/富山) 白馬岳(2932.3m) 2022年7月30日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:37 猿倉駐車場−−1:14 林道終点−−1:31 白馬尻−− 1:46 ケルン−−1:47 雪渓に乗る 1:49−−2:49 夏道(標高2180m アイゼンを脱ぐ)−−−3:23 小雪渓トラバース入口探索(見つからず) 3:33−−3:35 小雪渓トラバース(アイゼン装着)−−3:49 避難小屋−− 4:26 村営頂上宿舎−−4:42 白馬山荘−−4:50 白馬岳 5:53−−6:04 白馬山荘−−6:27 村営頂上宿舎−−6:56 避難小屋−−6:58 小雪渓トラバース−−7:23 大雪渓に乗る(アイゼン装着) 7:26−−7:44 夏道(アイゼンを脱ぐ) 7:46−−7:56 白馬尻−−8:09 林道終点−−8:18 長走沢 8:20−−8:40 猿倉駐車場

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県下新川郡朝日町
年月日2022年7月30日 日帰り
天候快晴
山行種類ほぼ一般登山
交通手段マイカー
駐車場猿倉に駐車場あり。ただし2022年も工事のため駐車場が縮小
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無小雪渓トラバースが急で滑落注意。しっかり雪切されているので雪が緩んだ日中ならばアイゼン不要で通過可能だが、万が一滑落すると軽傷では済まないので特に下りでは軽アイゼン着用が望ましい。この分ではお盆休みでもまだ小雪渓は残ったままだろう
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント花のピークを見越して白馬岳へ。大気の状態が不安定で日中は雷雨の確率が高いため、山頂で日の出を迎えるようなスケジュールで夜中に出発。久しぶりに好天で満天の星空の中を登り、山頂到着時も快晴で久しぶりに大展望を楽しめた。期待通り高山植物は今がピークで、あちらこちらでイワオウギ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ハクサンフウロ等を中心とするお花畑が広がっていた。すれ違った登山者数はおそらく今シーズン最多だったろう


標高2500m付近のお花畑。登山道脇から稜線まで全部お花畑! 黄色い大きな花はシナノキンバイ、小さな黄色い花はミヤマキンポウゲ


夜中の猿倉駐車場。断続的に車が上がってくる 白馬尻。今年はトイレのみある
大雪渓のケルン。このすぐ先で大雪渓に乗る 大雪渓に乗る。軽アイゼン装着
標高2180m付近で大雪渓から左岸に登る 小雪渓から流れ落ちる沢
小雪渓のトラバース道を発見できず雪切されていない斜面を歩いた 避難小屋
村営頂上宿舎。今は白馬山荘が営業自粛のため唯一の山小屋 テント場。土曜朝にしては数が多い
県境稜線に出た。今週は快晴! 白馬山荘はコロナ発生のため営業自粛中
ミヤマオトコヨモギだと思っていたらヒトツバヨモギが正解だった セリ科の何か
ミヤマウイキョウ。セリ科でも葉っぱの形状から判別しやすい イブキジャコウソウ
ミヤマアケボノソウ。リンドウの仲間 毛があるのでチシマギキョウ
エーデルワイスの仲間のミネウスユキソウ タカネツメクサ
花が終わっているがイワベンケイ 日の出を待つ人達。白馬山荘が営業していればもっと多い
山頂を見上げる 大雪渓を見下ろす。今頃たくさん登っている頃だろう
僅かに咲き残ったミヤマキンバイ 雲海から日の出
イワツメクサ 白馬岳山頂。2週間前とは比較にならない人数
白馬岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
白馬岳から見た北アルプス南部
白馬岳から見た穂高連峰、槍ヶ岳
白馬岳の影が延びる 黒部川河口
旭岳の向こうに富山市街地 臨時休業でも白馬山荘は荷揚げ中
イワオウギだと思っていたが、花の穂が短いのでシロウマオウギ
イワオウギに似た花は他にタイツリオウギ、リシリオウギがあるとのこと
シコタンハコベ。花はイワツメクサっぽいが葉が違う
タカネシオガマ。今が盛り ミヤマダイコンソウの咲き残り
タカネヤハズハハコ 2週間前は咲き誇っていたミヤマシオガマはおしまい
ミヤマオダマキはおしまい 白馬山荘
コゴメグサ。細かな種類は判別が難しい ウサギギク
コケモモ。白馬岳では少数派 水源の雪渓横を下る。花がたくさん咲いている
ミヤマダイモンジソウ。群落を形成していた ミヤマクワガタ
お花畑 ハクサンイチゲ。2週間前よりかなり減っていた
村営頂上宿舎 シナノキンバイ
一部ではまだウルップソウが咲き残っていた ヨツバシオガマ
ミヤマコウゾリナ ミヤマアキノキリンソウ
ハクサンフウロ。今が盛りとばかりにお花畑の主役の一角 水場
シコタンソウ。ほぼ花はおしまい ミヤマキンポウゲ。まだまだたくさん咲いている
クロトウヒレン ヒメクワガタ
沢周囲にはまだハクサンイチゲが咲いていた アオノツガザクラ
コイワカガミ チングルマはほぼおしまい
ミヤマアカバナ 花弁の数からしてメタカラコウ
オタカラコウ、メタカラコウの群落 ミヤマアケボノソウ
イブキトラノオじゃない。イブキトラノオは多数みられた ツガザクラ
杓子岳 ミヤマミミナグサ
お花畑 クルマユリ
登山道西側はどこもかしこもお花畑 ミソガワソウ。白馬尻付近まで分布している
タカネナデシコ イブキジャコウソウ
テガタチドリ。葱平でも見られる ニホンザルの群れ。雷鳥に被害が無ければいいが
ベニバナイチゴ 避難小屋と杓子岳
小雪渓のトラバース 小雪渓を渡り終えたところ
正しいトラバース道と往路の位置関係 ヤマガラシ
シロウマアサツキ。固有種ではないが白馬岳でしか見たことはない 葱平から大雪渓を見下ろす
葱平から見上げる ミヤマコウゾリナ
ヤマハハコ オニシモツケ
オトギリソウ 花?の太さが一定なのはカラマツソウ
大雪渓最上部。左岸側はシュルントありでもっと下で左岸に取り付く 沢には橋がかけられている
2週間前にはここを歩けたのだが 現在の大雪渓終点
ベンガラとトラロープで左岸に誘導される 振り返ると雪渓の白と青空のコントラストが抜群!
今週も登山者の列ができていた 見下ろしても登山者の列
大雪渓起点から見上げる ここが大雪渓起点。すごい登山者数
スミレだが細かな種類は判別不能 オオヒョウタンボク
ズダヤクシュ ミヤマカラマツ
オオバミゾホオズキ モミジカラマツ
モミジカラマツの葉。名前の通り紅葉の葉に似た形状 メタカラコウ
ミソガワソウ 大パーティーが続々とやってくる
白馬尻 白馬尻から見た大雪渓
白馬尻直下のウマノアシガタ。ミヤマキンポウゲそっくり 林道終点には3台の車
タマガワホトトギス シロバナニガナ
葉が対生なのでヒヨドリソウ ソバナ
オオバギボウシ 葉が4枚組なのでヨツバヒヨドリ
長走沢で水浴び アジサイ
猿倉に到着してもまだまだ登りの登山者の姿が クガイソウ
おそらくコオニユリ 猿倉駐車場は満車だった


 高山植物の開花のピークは7月終わり〜8月初め。花の種類が多い山では時期によって花の種類が移り変わるのでもう少し長く楽しめるが、ピークとしては同じ時期。開花のピークで登りたい北アルプスの山と言えば、やはり白馬岳だろう。大雪渓ルートなら花の数、種類とも北アトップクラスであり、大雪渓終点の標高2200m付近から山頂までずっと花が楽しめるという特異な場所である。昨年はピークの時期を1週間ほど外して登って少し残念な思いをしたので、今年は開花ピークの時期を狙って登ることにした。

 今週は大気の状態が不安定で主に西日本〜中部で大雨が降ったが、土曜日には多少はマシになる予報で、お昼頃〜夕方は雷雨になるが午前の早い時刻は晴れの予報。今回は2週間前と違って早朝でも好天が期待できるので、日の出の時刻に山頂到着できるように出発することにして早めに猿倉駐車場入。2週間前より駐車している車の数は圧倒的に多く、既に半分くらいが埋まっていた。そして私が下山した時には完全に満車になっていて、上がってきた車は下部の駐車場に誘導されていた。2週間前より気温は高めで車のドアを開けて冷気を入れながら酒を飲んで早めに寝た。

 起床は0時。外を見ると満天の星空。やや風があるのが気になるが、予報では山頂は弱風なので朝になれば大丈夫であろう。今回は天気予報では雨の確率は低いので雨対策グッズは全く持たず軽量化。ただしゴアだけは防寒を兼ねて持つ(いつもそうであるが)。小雪渓はまだ雪があるとのことで軽アイゼンも持った。大雪渓もアイゼンがあった方が歩行スピードが落ちないので、荷物が多少増えてもアイゼンを持つメリットは大きい。暑さ対策で久しぶりに麦わら帽子も持つ。

 出発は0時半過ぎだったが、この時刻では上がってくる車がまだまだいる。遠方からやってきた人に違いない。ご苦労様。当然ながらこの時間に歩いている人は皆無であり、白馬尻を過ぎてケルンの先で大雪渓に乗って視界が開けても、前後に人の光は皆無で真っ暗だった。気温が高いので大雪渓までの歩きは最初から半袖半ズボンで、扇で扇ぎながら。夜中でこの気温では日中は暑くなりそうだ。

 大雪渓までの間で咲いていた花はタマガワホトトギス、ズダヤクシュ、オオレイジンソウ、ミヤマカラマツ、オオバミゾホオズキ、種類は不明だが白いスミレの花。白馬尻直下ではミヤマキンポウゲそっくりの花が咲いていたが(葉の形状も同じ)、標高的に考えればウマノアシガタだろう。ネットでミヤマキンポウゲとウマノアシガタの違いを調べたら、花の形に差があることが判明(初めて知った)。ミヤマキンポウゲの花弁は重なり合って隙間が無いのに対し、ウマノアシガタは花弁間に隙間があるとのことで、下山後に写真で確認したら隙間があったのでウマノアシガタと確定できた。

 ちなみに白馬尻〜大雪渓間で多く見られたミヤマカラマツもそっくりさんがいる。カラマツソウとモミジカラマツだ。モミジカラマツは葉っぱを見れば判別が簡単で、モミジの葉にそっくりで切れ込みが大きくギザギザしている。これに対してミヤマカラマツとカラマツソウは葉はギザギザせず丸っこい。ではミヤマカラマツとカラマツソウの違いは何かと言えば花の形状。ミヤマカラマツ、カラマツソウ、モミジカラマツとも花の形状は糸のような細長い雄しべが線香花火のように広がっているが、カラマツソウとモミジカラマツは雄しべの太さが一定であるが、ミヤマカラマツだけは途中が太くなっている。このため、ミヤマカラマツの花はカラマツソウに比べて何となくフサフサしているような印象を受ける。

 大雪渓に乗ると時々ベンガラが現れるが他には目印は無い。もちろん一面の雪の上なので道は無いが、慣れれば雪表面の汚れ方の違いでトレースが判別できるようになる。今回はLEDライトが照らす狭い範囲しか見えない状態でも、2週間前よりも格段にトレースの判別が簡単になりルートを外すことはなかった。それだけ昨日大雪渓を歩いた人数が多かったということだろう。  今年の大雪渓は雪渓取付きから雪渓を下りる地点までの全区間でクラックは皆無で、基本的には雪渓のどこを歩いてもOKである。ただし、ある程度高度を上げて以降は杓子尾根側から頻繁に落石があるので、谷の中央よりも右側(北側)を歩くのが安全だ。今回も真っ暗な時間帯に大雪渓を最初から最後まで歩いたので、杓子尾根からの落石は音だけ聞こえて石は見えないので気持ち悪かった。やや規模の大きな落石があったようで、1回だけは10秒を越える長い時間に渡ってガラガラと崩れる音が続いた。一般の人が真っ暗闇の時間帯に大雪渓を歩くのはお勧めできない。

 2週間前よりも標高が約20m落ちた地点でベンガラとトラロープで左岸に誘導されて夏道に上陸。この先は小雪渓までアイゼン不要なのでここでアイゼンを脱ぐ。葱平の尾根に達するまでしばらくは崩れやすい左岸のトラバースが続き、雪渓と比較してかなり歩きにくい。小雪渓から流れる沢には例年通り橋がかけられていた。この橋を渡れば葱平の尾根に取り付き、2週間前はここまで雪渓を歩けたことになる。ここでもまだ雪渓は続いているが左岸側はシュルントが口を開けていて、左岸に安全に上陸できる場所は非常に狭く、そこも数日のうちにシュルントができるだろう。安全を考慮すれば今回の上陸場所が正解だ。

 葱平の登りはきついが2週間前と変わらぬほど高山植物が多く癒される。2週間前に開花のピークと思われたイワオウギやミヤマキンポウゲがまだたくさん咲いているのにはびっくり。同じ花が2週間もしおれず咲き続けるわけはないので、新しい花芽が次々と開花しているのだろう。テガタチドリは今がピーク。前回は蕾だったシロウマアサツキは紫色のネギ坊主の花を咲かせていた。ちなみにシロウマアサツキは固有種ではないが、私が知る限りは白馬岳以外で見たことはない。ネットの記録では北海道の山で見られるようだ。

 葱平に取り付いてから雪渓の下流方向を見ると2つのライトの光が。私とは1時間位の時間差がありそうだが、それでも私以外に夜中に大雪渓を登る人がいるとはちょっと驚き。まあ、本格的な夏山シーズンなので夜間登山者がいても不思議ではないが。

 問題の小雪渓はまだ雪が付いていたが、雪渓を半分くらい横断するように夏道が出ていたのでそこを進んでみたが、その先には雪切されていない雪の急斜面が登場。ピッケル無しの6本爪軽アイゼンでの通過はちょっと心配なのでここはパスして、もっと上部にある雪切された安全ルートを通ることにして雪渓脇を登っていくが、右手の雪渓に雪切された道が一向に表れない。まだ真っ暗な時間だし、運悪くガスがかかってライトの光で見える範囲がさらに狭まったことも道が発見できない要因だっただろう。明らかに標高を上げ過ぎと思える場所まで登ってからUターンし、雪面上に道が無いがよ〜く見ながら下ったがやはり発見できずに夏道ルートまで下ってきてしまった。明るくなって周囲が見えるようになる時間まで待つ手もあるが、夏道が消えた場所から雪切されていない雪渓をトラバースすることにした。雪が消えた最も奥で軽アイゼンを装着、ピッケルが無いのが不安であるが、実際に雪の斜面に乗ってみるとスプーンカットをうまく使えば足元の傾斜はそれほどではなく、少なくとも登りでは軽アイゼンでも問題なさそうだ。

 6本爪軽アイゼンでも歩けるのは良かったが、問題は雪切がないので正しいルートが分からないこと。まずは水平に歩いて巨岩の基部を回り込んでみたが、その向こうもずっと雪渓が続いている。ここは何度も歩いているので夏道の様子は分かっているが、小雪渓を横断する区間は2,30mであり、明らかにおかしい。もしかしたらこの巨岩の上が夏道か?と予想して雪面を登ると僅かな距離で雪が切れて夏道が登場した。周囲が明るければ簡単に分かることだが、ライトの光だけで登るとこんなことが生じることがある。

 もうこの先はアイゼンは不要なのでザックにしまい、少しの間だけ急な登りを終えると避難小屋が登場し、それ以降は傾斜が緩んだ広い谷間を登っていくと同時に登山道の両側はお花畑に変わる。と言ってもまだ真っ暗な時刻で登山道脇の花しか見えないが、2週間前と比較するとハクサンフウロが劇的に増えて、逆にハクサンイチゲ、イワカガミはピークを過ぎてかなり数を減らし、チングルマはほぼ終わっていた。ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、イワオウギは相変わらずたくさん咲いていた。2週間前にはまだ蕾だったチシマギキョウは数を増やしていた。そしてオタカラコウ、メタカラコウも花盛り。まだ下界は真夏だが、山では徐々に秋の花が増え始めていた。

 お花畑を登っている間は薄明るくなり始める時間帯で、山頂方面が薄っすらと見え始めたが予想に反してガスがかかっている。反対側の杓子岳は山頂は見えているが雲の底が山頂スレスレで雲が低い。そういえばいつの間にか星は見えなくなっていて、山頂到着時にガスで展望がない可能性が。まあ、今回も花を楽しむことが主目的なので雨さえ降らなければいいけど。

 村営頂上宿舎に到着する頃には明るくなりライト不要に。水場で僅かに水を補給。今回のコースは大雪渓以降は常念岳の一ノ沢コース同様にあちこちから沢が流れ込むので水を担いで登る必要はない。この頃になるとガスは晴れて頭上は青空のようだ(まだ完全に明るくなっていないので空の色が分からなかった)。

 前回は県境稜線に出ると冷たい西寄りの風が強かったが、今回は予報通りほぼ無風で半袖半ズボンのままでも体を動かしていれば寒さは感じないくらいであった。テント場のテントの数は2週間前は数張だったが今回は10張を越えていて、ライトの明かりも見えていた。

 稜線から山頂方向を見るといつもなら白馬山荘の明かりが見えるのだが、新型コロナ感染者が発生して営業自粛とのことで明かりは全く無かった。でも稜線を歩く人の姿は多く、頂上宿舎が大賑わいだったのだろう。最近の下界でのコロナ患者の急増を考えると、賑わうことは集団感染のリスクを増大させるので経営上は悩ましいところだろう。

 白馬山荘までの間の花は2週間前とはかなり異なっていた。オヤマノエンドウ、ミヤマシオガマ、ミヤマオダマキ、ミヤマキンバイは完全に終わっていて、ミヤマダイコンソウも大半が散ってしまい、今はタカネツメクサが主流であった。

 初めて見る扉が閉まったままの白馬山荘前を通過し、いつものように往路は山荘東側の登山道を登ることに。ここは白馬山荘宿泊者が日の出を見るためにたくさんいる場所であるが、無人かと思ったら10人くらいいたのでちょっと驚き。頂上宿舎に泊まった人ならわざわざこんな場所で日の出を見るよりは山頂で見ると思えるからだ。もしかしたら白馬山荘勤務者だったのかもしれない。営業自粛中とは言え完全には無人ではないだろう。現に荷揚げのヘリが白馬山荘に何度も荷物を降ろしていた。

 白馬山荘の建物脇にも高山植物が見られるのが白馬岳らしいところ。ヤマガラシ、ミヤマクワガタ、セリ科の何か、そしてミヤマオトコヨモギだと思って写真撮影したものを帰宅後にネットで再確認した結果、花はミヤマオトコヨモギと同じだが葉っぱが異なることが判明。調査の結果、ヒトツバヨモギだった。名前の通り葉っぱに切れ込みが無く細長い形状が特徴だ。今までミヤマオトコヨモギだと思っていた中にはこれが混じっていた可能性が。これからは葉っぱも気を付けて見ることにしよう。

 白馬山荘前を抜けて稜線東側を通る登山道は相変わらずお花畑状態で、昨年はここで初めてミヤマアケボノソウを見たが、今年も花を付けていた。イブキジャコウソウ、チシマギキョウ、ミヤマウイキョウや他のセリ科の何か、タカネツメクサ、ミネウスユキソウ、咲残りのミヤマダイコンソウとミヤマキンバイなど。

 縦走路に合流する直前で東の雲海から日の出。残念ながら地形線付近は薄い雲がかかっているようで、いつ日の出になったのははっきりとは分からず、徐々に明るくなっていつのまにか直射日光が照らしていた。東の空は雲海の高さが高く初めは頚城山脈も雲の中で見なかったが、下山時までには見えるようになった。しかし志賀高原から浅間山は全く見えないままであった。

 メインの縦走路に合流して山頂を目指すが、ここまでに見ていない新たな花はタカネシオガマくらいか。2週間前はミヤマシオガマばかりだったが、今はミヤマシオガマは皆無でタカネシオガマに入れ替わっていた。かなり似通った花であるが開花時期が微妙に違うようだ。

 2週間前は閑散としていた白馬岳山頂は今回は大賑わい。当然ながら今ここにいる登山者は村営頂上宿舎に宿泊か幕営した人しかいないはずで、金曜日の入山者はかなり多かったようだ。コロナ禍以降はほとんど見られなくなった学生パーティーの姿があり、徐々に元に戻りつつあるようだ。大半の登山者は栂池方面へと縦走に向かっていった。

 前回はガスで展望は無かったが、今回は文句なしの快晴。東の空は雲海で山々は見えないが八ヶ岳、南アルプス、中央アルプスは良く見えていた。もちろん北アルプスは問題なし。西には白山も見えていた。能登半島は微かに認識できる程度だが、黒部川河口付近の海岸線ははっきりと見えた。

 今回は天気が良くほぼ無風で寒さを感じなかったので1時間ほど山頂で休憩。その間に山頂でドローンを断続的に飛行させて撮影を行っている男性がいた。荷物の多さからしてプロの撮影者と思われたが、私の場合はドローンのあの音は不快極まりなく感じる。ネットで国立公園内でのドローンの飛行について調べてみたが、基本的には高度150m以下では国立公園を管理している国立公園管理官事務所・自然保護官事務所等に届け出を出せばいいようだ。ドローンに関する全国一律の統一的なルールはまだ無く、管理事務所によって細かなルールが異なるとのことで(飛行禁止区域もあるようだ)、届け出の際にそれらの説明があるとのこと。ざっと調べた限りは許可の敷居は意外と低いらしいが「細かなルール」が不明なので、人が多い山頂で飛ばしていいのかは分からなかった。でも人が多い週末に山頂で飛ばすのはどうなのかなぁと思わざるを得ない。

 白馬岳山頂では背の低いイワオウギあり。背が低いのは強風帯に自生しているからだと思っていたが、帰宅後に今回見かけた高山植物の種類を調べている中で、イワオウギに似た花がアルプスでは4種類あることが判明した(イワオウギ、シロウマオウギ、リシリオウギ、タイツリオウギ)。どれも非常によく似た外見であり、今まで同一視していたのも当然であった。違いは葉の数と花の数で、イワオウギだけは花が付く穂が長いので判別しやすいとのことだが、他3種は葉と花の数を良く見ないと判別は難しい。高山植物の世界はまだまだ奥が深くまさに「沼」である。特に「泥沼」と呼べるような種類の判断が難しく種類も多いのは、私の経験では「すみれ」「セリ科」「ユキノシタ科」である。これらは花が非常に似通っていて葉や生息地も併せて見ないと判別できない。

 山頂で新たに見かけた花は、タカネツメクサによく似た花だが葉っぱが異なるのはシコタンハコベ。私がこれを見かけたのは白馬岳と鹿島槍ヶ岳のみである。

 天気が良くて名残惜しいが今日も日中は雷雨が来る確率が高いので午前6時前に下山開始。普通なら登山口を出発する時刻だろう(笑) この時点ではガスが上がってくる気配はまだ皆無で天候が崩れる気配は感じられなかったが、帰宅後に雨雲レーダーを見たらお昼頃には既に雨雲がかかっていた。村営頂上宿舎の通過が午前6時過ぎだったが、大雪渓を登ってきた複数の登山者とすれ違った。この時刻にここまで上がってくるには夜中2時頃に猿倉を出発する必要があるはずで、暗闇の大雪渓を歩く人が思ったより多いことに驚いた。お花畑では登りの登山者はほとんおらず、小雪渓を通過して下る箇所から徐々に増えていった。

 登りでは暗闇で花の写真が撮影できなかったので、いつものように下りで目を皿のようにして見逃した花が無いか探しながら歩いたので大幅にスピードダウン。それでもクロユリは発見できなかった。背の低い花は背の高い花に隠れて発見が難しい。

 帰りは小雪渓の雪切されたルートは丸見えなので迷うことはなく、念のためにアイゼンを装着して横断した。なお、先行して雪渓を下り終わった高齢者パーティーはアイゼン無しで下ったようだが、万が一滑落した時の被害を考えればアイゼンは付けた方がいいだろう。

 葱平の下り始めから左岸トラバース区間では何人もの登りの登山者とすれ違う。そして大雪渓に乗る地点にはアイゼンを脱いでいる数人の姿があり、大雪渓を見下すと点々と登りの登山者の列。軽アイゼンを装着して登りの人とすれ違うたびにトレースを外して歩いて道を空ける。正確に表現すれば雪渓上は道は無いので「空ける」とは言えないが。道が無いのでトレースを外れて歩こうが歩きやすさは変わらない。

 大雪渓の終盤では登りの行列ができるほど人が多く、大雪渓に乗る地点では2,30人がアイゼン装着中。そして白馬尻から林道へ出る間も大集団(3,40人規模のパーティー)とのすれ違いが2回ほどあった。本日の村営頂上宿舎は満員であろう。

 最後の林道歩きは長走沢で軽く水浴び。新たに汗をかかないようにのんびり歩いていると、上がってきた軽装の女性に鑓温泉への道を聞かれた。女性に出会った場所は林道の鑓温泉入口を行き過ぎた地点であり、一緒に鑓温泉入口までおしゃべりしながら歩いた。山頂が目的ではなく鑓温泉が目的のようだった。今年は鑓温泉は営業しているので登山道の整備も入って問題なく歩けるだろう。

 林道から猿倉への分岐付近でも大パーティーが上がっていくのとすれ違った。この時間帯だと頂上宿舎到着は正午過ぎかな。雨に降られなければいいが。いつものように猿倉荘への道ではなく林道をそのまま下って駐車場へ到着。2週間前は駐車場整理の地元老人が入口にいたのだが今回は姿が見えないいなぁと不思議に思ったら、駐車場が満車になったので下部の駐車場に移動してそこへと車を誘導していたのであった。駐車場は晴れて暑かったが、白馬岳を見上げると雲に覆われて見えなくなっていた。

 

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